コハルアン日乗

コハルアン店主の私的記録|器と工藝のこと|神楽坂のこと

上品な青

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呉須絵具を使った青い絵付けの器・染付。

陶芸の長い歴史の中、この技法は、400年近くも日本の磁器絵付けの王座を守り続けてきました。
この期間、日本人の食生活はかなり変わったはずですが、それでも変わらずに食卓で愛され続けるということは、染付が醸す青の中に「深く日本人の琴線に触れる『何か』がある」ということだろうと思います。

日本における染付発祥の地は有田。
現在は磁土と呉須絵具さえあれば、何処でも染付を作ることは可能だし、実際に日本各地で染付の器が作られていますが、それでもパイオニアとしての有田には、「伝統」と「美意識」の蓄積ー という大変なアドバンテージがあると僕は考えます。

ここ数年お付き合いのある有田の工房禅では、横田勝郎さんとともに、三年前から二代目の翔太郎さんが作陶をはじめるようになりました。
親子二人で作る染付は、初期伊万里を彷彿とさせつつ、現代的な造形感覚・描画感覚も併せ持っています。どれを見ても、何十年後でも違和感なく使えそう。

いまは器ブーム。
いろいろな作り手がいろいろな切り口でいろいろな色や形のいろいろな器を作っていますが、二十年間この世界にいる立場から言わせてもらうと、時代感覚というのは目に見えないゆっくりとしたスピードながらも時々刻々と変化してゆくもの。十年前・二十年前の器のトレンドは今の時代の美感とはかなり異なっているし、「今日の素敵」が十年後・二十年後にそのまま当てはまるわけではありません。
そんなことを考えると、染付が持つ普遍性というのはなかなか魅力的ではないか、と。
そして、工房禅の染付には、時代を超えるしなやかな力が宿っているように思えます。


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