コハルアン日乗

コハルアン店主の私的記録|器と工藝のこと|神楽坂のこと

YANAGI NI KAZE

f:id:utsuwa-koharuan:20200102155436j:plain


あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

いつもの年だと、年末のブログのなかで、一年の反省をしてみたり、翌年の抱負を述べたりするのだけれど、昨年末はなんだかバタバタしていて、そこまでは手が回らず。
だらりと時の流れに任せて一年を終えてしまっていました。

ということで。

昨年って、どんな年だったろう?
なあんてことを思い返しつつ、正月二日の今日は、新しい年に対する想いなどを含めてつらつらと。書初め的に。


やっぱり去年起こった大きな出来事は、雑誌の連載をはじめたことかもしれませんね。

これまでもWEBでのコラム執筆はしてきたけれど、WEBと印刷物ではちょっと勝手が違うというかなんというか。
WEBの場合もおおよその字数は決まっているけれど、雑誌の場合はそのあたりが厳格。ぴったりの字数に納めないといけないのがいちばん難しいところです。
性格的に(いらないことも含めて)だらだらと書き続けてしまう癖があるので、限られたなかで必要な知識と情報を無駄なく織り込むことに四苦八苦しています。「セレクト」という行為には慣れているはずなのに、いざ言葉の選別になると、まだまだ未熟。

でも、このお仕事、苦痛ではないんですよ。ていうか、むしろ面白いの。
器というものの魅力を伝えるのにいちばん適しているのは、いうまでもなく写真なのだけれど、そこに写らないあれこれを適切な言葉で平易に伝える行為も侮れないなあ、と。
オファーをいただける限り、今年もやれるだけのことはやってみたいと思っています。


そしてもうひとつ。
昨年は、良きにつけ悪しきにつけ、インターネットの影響力を実感した年でした。

「良きにつけ」部門として挙げられるのは、ニューヨークタイムズ(一行だけ紹介された!)とかインスタグラムとかを見て、欧米やアジアから工藝好きの方々が来てくれたこと。観光地に押し寄せる層とは異なり、静かに上品にモノと対話してくれる彼らはなかなか素敵。
言葉は通じなくても、モノを媒介として美意識の交感ができるなんて、とてもうれしいことじゃない?同じモノを見て美しいと感じる人が海の向こうにいる、と思うと、心にはあたたかなものが宿るものです。
こういうことがあると、人間っていいな、この商売やっててよかったな、なーんて思っちゃいますね。


その反面、心があたたまらない「悪しきにつけ」部門のできごとも。

実は……、とあるレビューサイトで辛辣なご意見(それもかなり長文!)を賜っちゃったんですよ。
こちらのレビュー文、出だしはこちらの至らぬ点を冷静に指摘してくれていて「ごもっとも」と反省すべき内容だったのですが、後半部分になると話が「あの店に置いてあるものが嫌い。器好きのアタクシはああいうものは認めませんよ。ふんっ!」的な内容に脱線。

昔だったら友達や家族やパートナーにこぼして済んでたような内輪の悪口が、いまはネット上での公的な意見表明にすり替わっちゃうのね……とおののき、これまでとは異質の時代がやってきたことを痛感しました。
そりゃあ最初に読んだときはかなり凹んだんですけど……。今後は、正当な指摘に耳を傾ける謙虚さは持ちつつも、匿名で発せられる諸々(批評というテイを装った悪口)についてはさらりと流してゆくことに決めました。ネット時代を生きる知恵として。


ん?流す?……などと考えているうちに、今年の目標、というか格言が唐突に浮かんできました。

「柳に風」

これかな(笑)。
春風がそよぐ日も野分が吹き荒れる日も、決して折れないしなやかな美意識を持ちつつ、(のらりくらりと)おだやかな心で過ごしてゆきたいもの。

今やらなきゃいけないのは、お店を愛してくれる方々の厚意に対して、きちんと恩返しをしてゆくこと。そして、この広い世界のどこかにいる心を繋ぎ合える人たちにも思いを致すこと。
50歳になってからこのかた感じているのは、やはり気力体力の衰えで、これは覆うべくもない現実。であれば、限られた気力体力は、大事な課題に集中して注ぎ込むべきなのかな、と。
一意専心。今年はそれを実践し、「これでいいのだ(by バカボンパパ)」と思える一年にしたいと考えています。


それでは、今年もどうぞよろしくお願いいたします。
新年は4日から営業いたします。みなさまのお越しをお待ちしております。

1月4日(土) 14:00-17:00
1月5日(日) 14:00-17:00



コハルアン オフィシャルページ https://www.room-j.jp