コハルアン日乗

コハルアン店主の私的記録|器と工藝のこと|神楽坂のこと

打ち止め

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協賛店としてコハルアンも発行に協力してきた神楽坂のタウン誌・かぐらむらが、ついに100号。
そして、この記念すべき100号をもって、定期発刊は打ち止めになります。
ご近所にお住いのお客さまも、隔月で届くかぐらむらの情報を心待ちにしている方が多くて、10月になってからこのかた、寂しいねえ、という話がしばしば。それだけ、街にしっかり根付いたタウン誌だったということでしょう。

16年続いたそうで、うちの店はその歴史の中の6年くらい関わらせてもらったことになりますが、このタウン誌に協賛したことで、僕自身、この街に対する理解(および愛着)はかなり深まったと言えそう。
なにしろ、かぐらむらに毎回掲載されるオーラルヒストリーに触れることで、神楽坂という街の成り立ちやそこに生まれた物語の一端を知ることができたわけですから。

新劇の黎明期、島村抱月松井須磨子が恋と命を燃やした街。
尾崎紅葉が居宅を構え、若くして亡くなった街。
夏目漱石が原稿用紙を買ったりご飯を食べたり落語を愉しんだ街。

モダンな山の手の繁華街であった神楽坂は、艶やかな花街であるだけではなく、もっと複雑な文化の色が混ざりあってできた街だったわけですね。そんなあれこれを知ることができたのも、かぐらむらのおかげでした。


そして、ここ数年続いている神楽坂(特に坂上)の変化は、とてもダイナミック。
過去は過去として大事に受け継いでいく必要があるけれど(レガシーってやつ?)、先人たちが築いた過去の栄光のおこぼれに預かるだけであれば、神楽坂ブランドの輝きは早晩失われてしまうのではないか、といういくばくかの危機感を、僕は抱いています。

街を16年間照らし続けた灯台のあかりが消えてしまうのは、確かに寂しいこと。
でも、これからもこの街で商いを続けてゆく僕としては、過去と共生しながらも、それをゆるやかに超克するような「いま」を育てようという気概が必要ではないか思っているのです。
この街に店を構えることができた奇縁に感謝しつつ、これからもここで静かな矜持とともに生きてゆくことにいたしましょう。


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