コハルアン日乗

コハルアン店主の私的記録|器と工藝のこと|神楽坂のこと

陶山神社

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日本の磁器発祥の地と言われる有田は、百貨店に勤めていた時代(←大昔ね)からちょくちょくお邪魔している町。
ただ、これまでの出張ではスケジュールを盛りすぎて、窯元や作家の工房を廻ってへとへとになって帰ってくるだけでした。
そんなわけで、有田では自由時間を作ったことがなかったのだけれど、今年11月の出張の際には、半日時間を取って町をぶらぶら。有田が陶郷となった所以を自分の目と足でしっかりと確認してきました。

有田焼の祖とされるのは、朝鮮の役を戦った鍋島直茂に連れてこられた陶工・李参平。
この人が400年前に泉山で白磁に向いた良質の陶石を発見し、産業としての磁器生産をはじめたと言われています。

そして、この李参平を祀っているのが、有田の小高い丘にある陶山神社です。
「なかなかすごい神社だよ」という話は十年以上前から聞いていたのですが、今回、ようやく行くことができました。
この神社の特筆すべきところは、鳥居や燈篭、狛犬や水瓶等が染付磁器で作られていること。磁土の恵みがもたらした富に対する感謝の気持ちが、技術の粋を集めた寄進によって表わされているのです。境内を見渡してそれらの寄進物を見て回ると、ここが有田の陶工たちにとっての心のよりどころであることがよくわかります。

島国に生まれた我々日本人は、閉ざされた密室の中で生きてきたように思いがちだけれど、こうして島の外からもたらされたものが日本の文明の血となり肉となり、それらを我々が咀嚼することで伝統になり得たことに留意しておかなければいけないと思います。
やきものを含めた工藝の分野においては、殊にそれが顕著かな。

その成り立ちを含めて、訪ねた場所のあれこれをねちねちとほじくってみれば、自分の中に新たな視点が加わり、物事を多面体として楽しむ方法が増えてゆくような気がします。


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