コハルアン日乗

コハルアン店主の私的記録|器と工藝のこと|神楽坂のこと

耳を傾ける

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深みを湛えるよきたたずまいのムクロジの器。
いま展示しているコウノストモヤさんの木工作品たちの中で、唯一、木の割れをそのまま生かしているのが、このプレートです。


考えてみれば、我々人間だって、ひとりひとり顔も違えば考え方も違うもの。
きれいなプロダクトに慣れてしまうと、どうしても精緻で形の揃った器を選びがちだけれど、木も我々と同じく生命を持ったものだということを思い起こせば、割れであれ、傷であれ、木目の癖であれ、こういう「生命の痕跡」には俄然親しみが湧いてくるものではないでしょうか。

ただ、傷や割れがあればなんでもかんでも味になるというわけではないのも確か。この材を無駄にすることなく、これほどよきたたずまいの器に加工できたのは、木のプロフェッショナル・コウノスさんが木の声にしっかりと耳を傾けたからではないか、と思います。

では、それを受け、作り手ではない我々が成すべきことはなんでしょう?
それは、衒うことなく器を日々使い、食材やお料理の色をしみこませ、かつて生命を宿していたモノに新たな命を吹き込むこと。
作る人から使う人へのささやかなリレーで、ムクロジにとって第二の人生(木生?)が始まることを願っています。


輪花プレート 9寸 ¥9180 (Sold Out)


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企画展「陰翳のある食卓」 3/1-14 https://www.room-j.jp/gallery/2019/03/31-1.php