コハルアン日乗

コハルアン店主の私的記録|器と工藝のこと|神楽坂のこと

木彫のひと

f:id:utsuwa-koharuan:20190511142309j:plain


富山県の井波ー。
神社仏閣の彫刻に関わる伝統技術が集積し、工藝界では、井波彫刻という名で広く知られた町です。

鈴木美央さんは、その井波で修業した木彫家。
家族で営む鈴木彫刻所(福井県鯖江市)では、仏像や欄間など伝統的な彫刻を手掛けていますが、美央さん個人の仕事として、女性らしいやわらかな造形感覚をいかした一般の方向けの作品も制作しています。
そんな中で僕が注目しているのは、植物をモチーフにしたブローチなどの小品。

先日、鈴木さんから、彫りかけの紫陽花のブローチとそのモチーフとなった花(すでにドライになったもの)が見本品として届き、その描写力と造形感覚に感心しました。

往々にして、寺社の欄間や木扉などはモチーフがデフォルメされ、写実主義とはかけ離れた様式美によって装飾されているように見えますが、それとてしっかりとした観察眼の上に成り立っているものなんですよね。
結局のところ、様式美を支えているのは、個々の作り手の「モノを捉える力」なのだと思います。デフォルメに至るまでの過程が大事だということ。

そういう力によって仕上げられたブローチは、アイテムとしては現代的なものだけれど、伝統工藝を凝縮させたエッセンスのような存在だと言えるかもしれません。
鈴木美央さんのブローチは、開催中の展示「私のmemento」で手に取っていただけます。


私のmemento 5/3-23 https://www.room-j.jp/gallery/2019/04/53memento.php
コハルアン オフィシャルページ https://www.room-j.jp