コハルアン日乗

コハルアン店主の私的記録|器と工藝のこと|神楽坂のこと

はじめてのガラス

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お店では、基本的に、ずっと継続して制作をお願いしている作り手が多いのですが、ときには新たな取り組みも必要。
年に数名は、新たな作り手とのお付き合いをはじめています。

うちのお店って、神楽坂という立地(いわゆる観光地ってやつですか)にも関わらず、ご常連さま率が高いお店だと思うんですよ。観光に来て一回こっきりで「はい、さよなら」という感じではなく、定期的に覗きに来てくれるお馴染みさんが多い。本当にありがたいことに。
それってつまり、継続して置いている作り手のファンが多いということでもあるわけです。だから、新たな作り手を紹介するときは、けっこうドキドキするんですよね。○○さんはどう思うかな?とか、××さんは気に入ってくれるかな?とか、お客さまの顔がちらちら頭に浮かんで。

いま開催している展示「私のmemento」では、ガラス作家・小林裕之さん希さん夫妻の作品が初登場。
ガラスという硬質でクールな素材を活かした精緻な造型、そして、その中に宿るやさしい雰囲気が特徴です。

昨年末には京都の伏見にある工房を訪ねて打ち合わせをして、用意周到に準備を重ねてきたし、十分なキャリアを持つ二人の技術にも感性にも全幅の信頼を置いているけれど、それでもやはり、お客さまあってのお店ですからね。どんなに作品が素敵であったとしても、それがどういうふうに受け止めてもらえるかは、なかなか読みにくいもの。
そんなわけで、今回も展示が始まるまでは内心ドキドキしていたのですが、蓋を開けてみたら、そんな不安はどこ吹く風。一時は完売に近い状態になってしまい、会期半ばで予定外の追加納品をしていただくことで事なきを得ました。

ありきたりな表現で何ですが、店主としては、「ただモノを売る」ということではなく(もちろん『売れること』は大事だけれど)、「モノがまとう空気を伝える」心づもりでいるので、「よし、伝わった!」という手応えが感じられると、やはりうれしくなります。
この気持ちを例えるなら、苗から育てた果物が実ったときに感じる達成感、とでもいう感じでしょうか。

小林さんの美しい作品、追加で届いていますので、たくさんの方に手に取っていただきたいと思います。ぜひ。


企画展「私のmemento」 5/3-23 https://www.room-j.jp/gallery/2019/04/53memento.php
コハルアン オフィシャルページ https://www.room-j.jp