コハルアン日乗

コハルアン店主の私的記録|器と工藝のこと|神楽坂のこと

金澤の思ひ出

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ひとつの場所を短期間で複数回旅することはめったにないのだけれど、8月と9月は、立て続けに金沢へ。
一回目(8月下旬)は仕事、二回目(9月上旬)はプライベートで。

私用だった二回目の旅では、一回目に時間がなくて行けなかった場所に行ってきました。リベンジ的に。
お寿司をたべたり、名物のおでんを食べたり、老舗の洋食を食べたり、いろいろなお店を廻ったのだけれど、なかでも、かなり濃ゆくて忘れられないのが、純喫茶ローレンス。

繁華街・香林坊にある東急ハンズの裏手の古いビルの二階。創業52年になる老舗で、「純喫茶とはこういうものであるよ」という感じのインテリア。ドライフラワーいっぱい、ブロカント的な雰囲気のインテリアが素敵です。古いため、どことなく迷宮感があったりして。
かつて金沢に住んでいた五木寛之さんは、このお店で原稿を書き、ここの黒電話で直木賞受賞の報せを受けたのだそう。


そして、なんといっても面白いのが、こちらの店のマダム。
アイスコーヒーを頼んだら、400ccは入ろうかという大きなグラス(昔カルピスを飲んだようなやつ)に氷ナシでなみなみと注がれてやってきて、まずはそのことに驚いたのですが、その後、アイスクリームやらお菓子がもりもりと。食べきれん。

遠いところからわざわざ来てくれる人もいるから、また来てもらえるように、たっぷりサービスするのだそう。

おしゃべりが好きらしく、あちこち話が飛ぶのが楽しいのですよ。
「ストローは要らないですよ」と告げれば、プラスティックの海洋投棄の話に花が咲くし、こんどは、唐突に自分の描いた絵を出してきて、その説明を始めたり。その間、オーダー待ちのお客は放置されちゃったりして、その脱線っぷりはなかなかのもの。

最近、市井に潜む「名物○○○」みたいな人を引っぱり出してきて弄るテレビ番組が多いけれど、この世のすべてのものを白日の下に晒す必要なんてまったくないと思うんですよね。潜んでいるからこそ面白いことの方が多いわけで。
マダムには、あの古いビルの二階に広がる迷宮にいつまでも潜んでいてほしいと思います。

金沢に行く楽しみがひとつ増えました。


コハルアン オフィシャルページ https://www.room-j.jp