コハルアン日乗

コハルアン店主の私的記録|器と工藝のこと|神楽坂のこと

暮らしの図鑑 民藝と手仕事

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昨年は、「暮らしの図鑑」という書籍シリーズの第一弾「うつわ」で、(部分的にではあるけれど)監修という新しい世界を体験。
そして今年は、同じシリーズの新刊「民藝と手仕事」において、部分監修+一部コラム執筆+一部画像提供、と少々バージョンアップした形でふたたび本作りに携わることができました。編集者・Kさんとは、「うつわ」の刊行後、やり残したことを続巻でやりましょうねーという話をしていたのですが、まさか一年という短いタームで実現するとは。

民藝という概念については、数多ある既刊の書籍で語り尽くされているので、お勉強的な内容ではなく、その理念をいかに現代生活の中に取り込んで楽しめるか、という方向で編集は進んでゆきました。
章立ては、民藝的概念で作られた道具及び郷土玩具の紹介、民藝という概念の解説と知識の整理、民藝にまつわる土地を巡る旅、の三段構え。
僕は全体の五分の一程度に携わっています。

監修者ごとにそれぞれの基準と見識を持って編集に当たっていると思うのですが、僕自身は以下のような考えで、日本各地の産地や手仕事の紹介をしてみました。

1、民藝運動創始者柳宗悦が「これぞ民藝」という感じで紹介している教科書的な産地や手仕事
2、現在の状況を見ると民藝とは言い難いが、歴史的な意味合いで民藝的要素を内包してきた産地や手仕事
3、過去の経緯を見ると民藝とは言い難いが、地産地消的な制作体制への回帰など、新たに民藝的萌芽が見られる産地や手仕事

たぶん、これまでの類書は、1の要素に限定してきたと思うのですが、新たに2と3を加えることで、民藝という言葉が持つ本来の意味(民衆的工藝ってやつです)を立体的に考えることができるのかな、と。
民藝という言葉自体、柳が生み出したものだから、民藝は柳(およびその後継者たち)の専売特許ともいえるわけですが、時代は動いているので、柳の時代とは見える世界も少々変わっているのかな、などと考えました。

まあ、ここであれこれ追加説明するのも野暮なので、「暮らしの図鑑 民藝と手仕事」、お手に取っていただきご一読いただければ、と思います。

本書では、監修者と編集者もがんばっていますが、全編に散りばめられた勝山八千代さんの素敵なイラストもなかなかの見どころ。
「図鑑」と銘打っているだけに、目で見ても楽しく、大人の絵本といえるような趣もあり。

本日10月22日発売ですので、みなさまぜひ。



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