コハルアン日乗

コハルアン店主の私的記録|器と工藝のこと|神楽坂のこと

くるみのかご

f:id:utsuwa-koharuan:20190612162618j:plain


ずっと興味があったけれど、うちの店で並べるにはもうちょっと勉強と調査が必要かな、と思い、これまで扱いを躊躇ってきたくるみのかご。
このたび、秋田でNowvillageを主宰する今村香織さんのおかげで、企画展示「初夏と夏の手工」(6/14-30)でご紹介できることになりました。念願かなって、という感じですね。

作り手は、秋田・田沢湖の藤沢柳市さん。
藤沢さんのくるみかごは、山の恵みをいただいて暮らしに活かす、という太古から続く自給自足的な思考をそのまま体現したような素朴さを持っています。
似た細工としては、ぶどうのかごもあるけれど、ぶどうは樹皮を削ぐと再生まで数年もかかるのだそう。その点、くるみはいちど樹皮を削いでも翌年には再生するのだそうです。そんなこともあって、藤沢さんはぶどうを使わずにくるみを使うのだとか。いまどきの言葉を使えば、究極のSDGs、という感じでしょうか。
今のようなバッグ状のかごに関しては80歳を過ぎてから編みはじめたそうですが、それまでに長い長い山との付き合いがある藤沢さん。背負いかごなどは物心ついた頃から編んでいたそうなので、SDGs的な考え方に行き着くのは当然のことなのかもしれません。

かちっとした緊張感ただよう工藝ではなく、使う人に微笑みかけてくれるようなやさしいたたずまい。
長く使うと革のようにつややかに変化する、という話を聞くと、日々の生活の友として、外出のおともにしてみたくなります。


コハルアン オフィシャルページ https://www.room-j.jp
初夏と夏の手工 6/14-30 https://www.room-j.jp/gallery/2019/05/614.php