コハルアン日乗

コハルアン店主の私的記録|器と工藝のこと|神楽坂のこと

旅は続く

長年、口癖のように「器の本を作りたい」と言い続けてきたのですが、今年はその夢が叶う年になりました。僕が、器をはじめとする手仕事の世界に関わるようになったのは、ミレニアルの頃。 勤めていた百貨店で和食器売場の歯車として、はじめは品出しをしたり…

惜別の念

何だろう、二年前のあのとき、既に嫌な予感はしていたのかもしれない……。一昨年のブログで、古巣の恵比寿三越を再訪した話を書いていますが、その際になんとなーく寂しい印象を受けていたんですよね。 「場」が時とともに姿を変えてゆくのは当然のことなのだ…

料理通信

今更ながら、という感じではありますが……。 これまで隔号で器コラムを連載してきた雑誌「料理通信」が、昨年末発売の2021年1月号をもって休刊になりました。思えば、連載の打診をいただいたのは2018年。 それまでもWEBのコラムは連載していたけれど、雑誌と…

新しい年

あけましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いいたします。 本当は昨年のうちに、コロナ禍で明け暮れた一年の想いをまとめてみようと考えていたのですが、結局果たせず。 まだ危機は続いていて……というか年末には第三波が襲ってきて、むしろその危…

暮らしの図鑑 民藝と手仕事

昨年は、「暮らしの図鑑」という書籍シリーズの第一弾「うつわ」で、(部分的にではあるけれど)監修という新しい世界を体験。 そして今年は、同じシリーズの新刊「民藝と手仕事」において、部分監修+一部コラム執筆+一部画像提供、と少々バージョンアップ…

答えはいらない

最近、諸々の媒体で諸々の文章を書いていることもあり、ブログにまで手が回らず……。 ひとつ前の記事を確認してみたら、もう2か月経ってるじゃん!とびっくり。そんなこんなで、今日はひさびさの更新になるわけですが、器には直接関係のない、雑感的なよもや…

こころみ

ひとことで言えば「仕事ができないな、お前!」ということなんだけれど、たくさんの作業をいっぺんにこなすのが苦手な僕。最近は実店舗の運営で手一杯になり、オンラインショップについては若干放置気味になってしまっていたのですが……。 気軽にご来店いただ…

新しい場所

世の中たいへんなことになってしまい、実店舗の方はしばらくお休みをいただくことにしています。 ただ、このまま休んでいるだけでよいわけはなく、こういう状況下で何をしなければならないかを考えているところ。この未曽有の危機に際してアクションが鈍いよ…

九年

あの大きな地震から九年。 そして、あの原発事故から九年。 昨日は、いま公開されている映画「Fukushima 50」を見てきました。 事故が起こったとき、福島第一原発と東電本店と首相官邸との間でどんなやりとりが成され、どうやって事態が推移していったのかを…

妄想の力

3/13からはじまる企画展示「妄想ANTIQUE」。 タイトルを発表してから、『妄想って……www』みたいな反応も多く、まあ、それはそれで仕方ないわけですが、企画者としてはちょっと言葉足らずだったかな、とも思うので、店主からひとこと。僕はもともと妄想癖があ…

令和の張り子

ふた月にいっぺんのペースで、工芸デザインに関するコラムを書かせてもらっているWEBマガジン「日本の美邸 -Japan Quality-」。こちらの媒体では、器に限らず工芸全般、その折々で紹介してみたいと思った造形について綴ることにしています。 今回は、公開…

YANAGI NI KAZE

あけましておめでとうございます。 本年もどうぞよろしくお願いいたします。いつもの年だと、年末のブログのなかで、一年の反省をしてみたり、翌年の抱負を述べたりするのだけれど、昨年末はなんだかバタバタしていて、そこまでは手が回らず。 だらりと時の…

すみっコがいい

この間、映画「すみっコぐらし」を観てきたことをSNSに投稿したのですが、それが周囲に静かな波紋を呼んでいて、ちょっと笑えます。 ほぼほぼ「意外!」というご意見。(笑)そうでしょうそうでしょう。 白髪もそのままに、黒とグレーの服ばかり愛用している…

きりんさん

年末のおたのしみ、漆作家・村上修一さんの個展がはじまっています。青年海外協力隊の隊員としてタンザニアに赴任していたことがある村上さんは、作家キャリアの初期から、アフリカの大地で見たキリンの姿を描いた漆絵作品を制作していましたが、今展でもそ…

会津建物探訪

今週は、漆作家・村上修一さんに会うために、会津を旅してきました。仕事の成果については、来月12月に開催する展示をご覧いただくとして、ここでは会津で見た建物の画像を何枚か貼っておきたいと思います。 建築にくわしいわけでも知識が豊富なわけでもない…

やめたこと

バタバタと日々もがいているうちに、いつのまにやら齢五十になってしまった。おおこわ。 「五十而知天命(五十にして天命を知る)」なんていうけれど、聖人君子のように生きられるわけもなく。思い起こせば、「三十而立(三十にして立つ)」くらいまではまあ…

静かに生きる

ずーっと前から、関西方面を旅する時に携行しているのが「Meets」(京阪神エルマガジン社)という町歩きガイドのシリーズ。 そして、こちらの別冊となる「ふだん遣いの神楽坂」という本が、9/18に刊行されました。 タイトルそのままの内容で、気取りはないけ…

金澤の思ひ出

ひとつの場所を短期間で複数回旅することはめったにないのだけれど、8月と9月は、立て続けに金沢へ。 一回目(8月下旬)は仕事、二回目(9月上旬)はプライベートで。私用だった二回目の旅では、一回目に時間がなくて行けなかった場所に行ってきました。リベ…

夏の終り

この暑さの中で旅をするのは若干躊躇われましたが、今週は北陸出張を敢行。 先週くらいまではすごい熱波に襲われていた北陸地方ですが、金沢についたら東京よりちょっと涼しく、いい感じの出張日和。 まずは九谷の川合孝知さんのところに寄り、そのあと福井…

上品な青

呉須絵具を使った青い絵付けの器・染付。陶芸の長い歴史の中、この技法は、400年近くも日本の磁器絵付けの王座を守り続けてきました。 この期間、日本人の食生活はかなり変わったはずですが、それでも変わらずに食卓で愛され続けるということは、染付が醸す…

書くお仕事

文章を書くことは、前から嫌いじゃなかったのですが、ここ最近、WEB媒体で文章を書く機会が増えています。二年以上前、「暮らしとおしゃれの編集室」で、朝食にまつわる四回完結の連載コラムの依頼を請けたのがはじまり。 次が、現在進行形の「チルチンびと…

監修する人

ホームページなどで既にアナウンスしているので、今更感はありますが、書籍の監修を担当したことをお知らせしておきますね。 タイトルは、「暮らしの図鑑 うつわ」。都内にある四つの器店の監修によってまとめられた本で、コハルの担当パートは「うつわをも…

くるみのかご

ずっと興味があったけれど、うちの店で並べるにはもうちょっと勉強と調査が必要かな、と思い、これまで扱いを躊躇ってきたくるみのかご。 このたび、秋田でNowvillageを主宰する今村香織さんのおかげで、企画展示「初夏と夏の手工」(6/14-30)でご紹介でき…

引き際の話

あと数か月で fifty years old になる僕ですが、時の流れの速さというのは本当にすさまじいなあ、と感じる今日この頃。実は、恵比寿のデパートに勤めていた時代から、20年近くも通い続けた渋谷のバーが先月末で閉店してしまい、現在、なんというか、心にぽっ…

はじめてのガラス

お店では、基本的に、ずっと継続して制作をお願いしている作り手が多いのですが、ときには新たな取り組みも必要。 年に数名は、新たな作り手とのお付き合いをはじめています。うちのお店って、神楽坂という立地(いわゆる観光地ってやつですか)にも関わらず…

平成の思い出

2000年(ミレニアルってやつ?)を挟んだ10年間、僕が勤めていたのが、恵比寿ガーデンプレイスの中にある三越。 20世紀中は食品のフロアを担当、21世紀になってからは生活用品のフロアを担当。当時、恵比寿ガーデンプレイス(’95年開業)は、20世紀最後の大…

動物と工藝

日本の器の世界では、長寿を意味する鶴と亀など、加飾に動物のモチーフを用いることが多いような気がします。コハルアンでは、そんな日本ならではの美的感覚を意識して、今月の下旬から「動物と工藝」という展示をおこなう予定。 「動物の姿を器(および工藝…

湯呑のこと

二か月ほど前から執筆を担当しはじめた、WEBサイト「日本の美邸 Japan Quality」の輪番コラム。 毎回、日本の工芸作品をひとつ取り上げ、そのデザインについて書き綴っています。最新の記事では、「湯呑」について書きました。マグに押されて、湯呑が食卓で…

中嶋窯の深皿

先日の秋田出張では、はじめてのお付き合いとなる中嶋窯・中嶋健一さんを訪問。中嶋さんの器については、昨年、はじめて見たときにデジャヴ的な懐かしい感覚があり、「何だろう、この感覚は?」と不思議に思っていました。そのあと、いろいろとやりとりがあ…

思えば遠くへ来たもんだ

定休日を利用して、秋田を旅してきました。秋田は、一度だけ角館を訪ねたことがあるけれど(←武家屋敷見学ね)、出張で行くのははじめて。 昨年の下半期は、うちの店を訪ねてきてくれた渡邊葵さん(角館・白岩焼和兵衛窯)の作品を扱い始め、さらには、これ…