コハルアン日乗

コハルアン店主の私的記録|器と工藝のこと|神楽坂のこと

動物と工藝

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日本の器の世界では、長寿を意味する鶴と亀など、加飾に動物のモチーフを用いることが多いような気がします。

コハルアンでは、そんな日本ならではの美的感覚を意識して、今月の下旬から「動物と工藝」という展示をおこなう予定。
「動物の姿を器(および工藝)の中に取り込んできた」ということは、日本人が古来いかに自然と共生してきたかを物語るものだと思います。展示では、そんなプリミティブな感覚に想いを馳せていただけたらうれしいなあ、と。そんなふうに考えています。

今回は、「動物と言えばこの人!」という感じで、象嵌陶器を制作する土本訓寛さん久美子さん夫妻と張り子作家の前田ビバリーさんに出品をお願いしました。

僕は、いつもかわいい作品を作ってくれるこの二組が、人柄もふくめて大好きなのですが、なぜ好きかというと、言葉が矛盾するようですが、作品の雰囲気が「かわいすぎない」から。
「かわいい」って、けっこう難しい感覚だと思うんですよね。人は「もっと!もっと!」という感じで、一旦かわいい方向にアクセルを踏んでしまうと、ブレーキが利かなくなってしまうもの。だから、足し算だけではなく引き算ができる作り手というのは、とても貴重だと思います。
間を作る、というか、どこかに抜けた部分を作る、というか。少しだけ隙を作ることで、そこには使う人(見る人)が想いを寄せる余地が生まれるような気がするのです。


土本さん夫妻は、湯呑やポットやお皿など器全般を。
そして、ビバリーさんは、新作の張り子人形を。

昔とは違い、日本人と自然との間には大きな距離ができてしまったけれど、動物をモチーフにした器や張り子を生活の片隅に置くことで、ひととき、この慌ただしい世界から心を解放することができるような気もします。
森でバードウォッチングをするように、動物園で生きものの大らかさに触れるように、はたまた都会の猫カフェで猫に癒されるように。

この機会に、工藝の中に生きる動物たちの姿を愛でていただきたいと思います。


動物と工藝 5/24-6/13 https://www.room-j.jp/gallery/2019/05/524-2.php
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