コハルアン日乗

コハルアン店主の私的記録|器と工藝のこと|神楽坂のこと

工藝

静かに生きる

ずーっと前から、関西方面を旅する時に携行しているのが「Meets」(京阪神エルマガジン社)という町歩きガイドのシリーズ。 そして、こちらの別冊となる「ふだん遣いの神楽坂」という本が、9/18に刊行されました。 タイトルそのままの内容で、気取りはないけ…

夏の終り

この暑さの中で旅をするのは若干躊躇われましたが、今週は北陸出張を敢行。 先週くらいまではすごい熱波に襲われていた北陸地方ですが、金沢についたら東京よりちょっと涼しく、いい感じの出張日和。 まずは九谷の川合孝知さんのところに寄り、そのあと福井…

進むこと

いまどきの作り手は大変だな、と思います。本当はロングセラー的に同じテイストの作品を長く売っていけることが理想だと思うけれど、今の時代、それはなかなか難しいですからね。 世間のスピードに合わせて新作をどんどん世に出してゆかないといけないような…

上品な青

呉須絵具を使った青い絵付けの器・染付。陶芸の長い歴史の中、この技法は、400年近くも日本の磁器絵付けの王座を守り続けてきました。 この期間、日本人の食生活はかなり変わったはずですが、それでも変わらずに食卓で愛され続けるということは、染付が醸す…

ピッチャー

秋田・中嶋窯の中嶋健一さんの手になるピッチャー。ピッチャー(水差し)というのは、民藝界隈でよく見かけるアイテムだと思います。 注ぐ器としてはもちろん、花器としても使いたくなる形状。なにしろ、鳥のような雰囲気が愛らしいですよね。民藝陶器の名工…

はじめてのガラス

お店では、基本的に、ずっと継続して制作をお願いしている作り手が多いのですが、ときには新たな取り組みも必要。 年に数名は、新たな作り手とのお付き合いをはじめています。うちのお店って、神楽坂という立地(いわゆる観光地ってやつですか)にも関わらず…

木彫のひと

富山県の井波ー。 神社仏閣の彫刻に関わる伝統技術が集積し、工藝界では、井波彫刻という名で広く知られた町です。鈴木美央さんは、その井波で修業した木彫家。 家族で営む鈴木彫刻所(福井県鯖江市)では、仏像や欄間など伝統的な彫刻を手掛けていますが、…

動物と工藝

日本の器の世界では、長寿を意味する鶴と亀など、加飾に動物のモチーフを用いることが多いような気がします。コハルアンでは、そんな日本ならではの美的感覚を意識して、今月の下旬から「動物と工藝」という展示をおこなう予定。 「動物の姿を器(および工藝…

湯呑のこと

二か月ほど前から執筆を担当しはじめた、WEBサイト「日本の美邸 Japan Quality」の輪番コラム。 毎回、日本の工芸作品をひとつ取り上げ、そのデザインについて書き綴っています。最新の記事では、「湯呑」について書きました。マグに押されて、湯呑が食卓で…

中嶋窯の深皿

先日の秋田出張では、はじめてのお付き合いとなる中嶋窯・中嶋健一さんを訪問。中嶋さんの器については、昨年、はじめて見たときにデジャヴ的な懐かしい感覚があり、「何だろう、この感覚は?」と不思議に思っていました。そのあと、いろいろとやりとりがあ…

思えば遠くへ来たもんだ

定休日を利用して、秋田を旅してきました。秋田は、一度だけ角館を訪ねたことがあるけれど(←武家屋敷見学ね)、出張で行くのははじめて。 昨年の下半期は、うちの店を訪ねてきてくれた渡邊葵さん(角館・白岩焼和兵衛窯)の作品を扱い始め、さらには、これ…

秩父の織物

関東には、銘仙と呼ばれる織物があり、その産地のひとつが埼玉県秩父市。 「秩父銘仙」という名前、着物好きの方であればご存じのことと思います。僕は着物や織物についてはまったくの素人。 絵柄の入った反物については、「先に染めた糸で反物を織るか(←絣…

日本の美邸

現在『コハル・ノート』という連載コラムを持っているサイト「チルチンびと広場」。 こちらには、「日本の美邸 Japan Quality」という別冊的姉妹サイトがあります。実際にご覧いただくとわかるのですが、各コンテンツとも日本語のテキストに付随して英訳を掲…

耳を傾ける

深みを湛えるよきたたずまいのムクロジの器。 いま展示しているコウノストモヤさんの木工作品たちの中で、唯一、木の割れをそのまま生かしているのが、このプレートです。 考えてみれば、我々人間だって、ひとりひとり顔も違えば考え方も違うもの。 きれいな…

厨子甕

先週行った益子参考館は、人間国宝・濱田庄司の旧宅を利用した美術館・収蔵館。 広い敷地の中には、濱田本人の作品だけではなく、生前の濱田が蒐集した膨大な工藝コレクションが所狭しと並んでいます。屋内だけではなく、大きな収蔵品屋外にも並べられている…

参考館まで

同じ仕事を長く続けていると、こなれてくる部分もあるけれど、溜め込んだ情報や知識が頭の中でこんがらかってしまうことも多々あります。 スーパークレバーな人であれば、そういうことはまったくないのでしょうが、僕はただの凡人。始終こんがらかりっぱなし…

いい意味で

日本語って、うつろいやすい言語ですよね。 どうにかすると、言葉が持っているニュアンス自体、時代とともにがらっと変わってしまうこともあります。僕の中では、その代表格が「ヤバい」。20世紀には「ヤバい」と言えば、悪い意味合いで使っていたものだけれ…

九谷の香炉

九谷焼の作り手・川合孝知さんとはけっこう長いお付き合い。 これまで食器を中心に作ってもらってきたのですが、川合さんの筆致で描かれた色絵の香炉がほしいなーと思い続けていて、ようやくその願いが叶いました。絵柄は山水画をアレンジしたもので、ぐるり…

陶山神社

日本の磁器発祥の地と言われる有田は、百貨店に勤めていた時代(←大昔ね)からちょくちょくお邪魔している町。 ただ、これまでの出張ではスケジュールを盛りすぎて、窯元や作家の工房を廻ってへとへとになって帰ってくるだけでした。 そんなわけで、有田では…

三国にて

北陸を旅したのは、9月のこと。福井では、陶芸家・タナカマナブさんが工房を構える三国湊を訪問。 風情のある港町には、北前船が日本の物流の花形であった頃の痕跡が方々に残っていて、タナカさんがあちこち案内してくれました。そのひとつが旧森田銀行本店…

漆の森へ

今年も残すところ10日あまりになりましたが、心が急いてしまうだけで、すべてがカラカラ空回り。 振り返れば、ブログの更新がかなり滞ってしまっていたので、心を落ち着けるためにも、今日から、書き忘れていた今年後半の諸々を備忘録として残していこうと思…

銀色の花

陶芸、七宝、彫金 ――。ここ数年、明治の超絶技巧が注目されているけれど、これらのジャンルの中でも彫金というのは、独特な立ち位置にあると思います。 もともと刀剣の鍔など武家社会に因って立つ体制側の工藝として存在しながら、幕府瓦解の後、ヨーロッパ…

小さきもの

器の仕事を始めた二十年ほど前から、地方に出張に行くたびに買ってしまうのが、ぐい吞みや箸置き、もしくはおてしょ(豆皿)。こうなるともう、ちょっとした癖(へき)。もちろん、お土産として荷物にならないという利点はあるわけですが、それ以上に、小さ…

白と黒と

産休などもあり、取り扱いをお休みしていた川島いずみさんに、久しぶりに飯碗を作ってもらいました。東洋の古陶磁への憧憬が強い作り手で、ここ最近は宋胡録(スンコロク=タイのやきもの)をモチーフにした作品を作っていましたが、川島さんの定番と言えば…

一汁一菜的に 2

昨日から企画展「一汁一菜的な食卓」がはじまりました。 タイトルについては、なぜ「一汁一菜的な食卓」なのか、「一汁一菜の食卓」ではないのか、「的」って何なんだ、おい、なんとか言ってみろよ、という声が聞こえてきそうなので、今日は、そこらへんのお…

一汁一菜的に 1

たぶんこれまでも書いてきたような話。僕は、奇を衒わない食卓というのが好きで、器屋をやっているくせに、家ではそんなに凝った料理は作らないたち。もちろん、栄養のバランスとかは考えるけれど、「紀ノ国屋で高級食材を買ってプロバンス風のオーブン料理…

動と静

ガラス工芸というのは、ふたつの意味で、制作工程と完成形とのギャップが激しい手仕事だな、と思います。そのギャップのひとつは、「熱→冷」。人の手で触れられないほどの熱い塊が、作業の末にひんやりとした印象の作品に変わる。ビフォアアフターの落差、な…

コラム補足

WEBマガジン「チルチンびと広場」に掲載されている僕の連載コラム「コハル・ノート -モノと語る-」が昨日更新されました。小石原焼についてのおはなしの三回目。 福岡県東峰村にある小石原地区は、昨年の九州北部豪雨で大変な被害があった地域。損害を被っ…

ガマの穂

夏が近づくと、花屋で見かけるようになるガマの穂。 きりたんぽのようなユーモラスな形状に目を奪われがちだけれど、彼らが生い茂っていた情景に思いを馳せれば、その立ち姿も風流に見えてこようというもの。 いま、店で彼らを受け止めているのは、山下秀樹…

足を運ぶ

超インドアな業務ばかりだと思われているであろう「器屋」というお仕事。器を並べ、決まった時間にお店を開け、決まった時間に閉める。そういう毎日のルーティンに関しては確かにインドアで成されているわけです。 特に僕の場合、デザインワークなどを含めた…