コハルアン日乗

コハルアン店主の私的記録|器と工藝のこと|神楽坂のこと

工藝

暮らしの図鑑 民藝と手仕事

昨年は、「暮らしの図鑑」という書籍シリーズの第一弾「うつわ」で、(部分的にではあるけれど)監修という新しい世界を体験。 そして今年は、同じシリーズの新刊「民藝と手仕事」において、部分監修+一部コラム執筆+一部画像提供、と少々バージョンアップ…

答えはいらない

最近、諸々の媒体で諸々の文章を書いていることもあり、ブログにまで手が回らず……。 ひとつ前の記事を確認してみたら、もう2か月経ってるじゃん!とびっくり。そんなこんなで、今日はひさびさの更新になるわけですが、器には直接関係のない、雑感的なよもや…

妄想の力

3/13からはじまる企画展示「妄想ANTIQUE」。 タイトルを発表してから、『妄想って……www』みたいな反応も多く、まあ、それはそれで仕方ないわけですが、企画者としてはちょっと言葉足らずだったかな、とも思うので、店主からひとこと。僕はもともと妄想癖があ…

令和の張り子

ふた月にいっぺんのペースで、工芸デザインに関するコラムを書かせてもらっているWEBマガジン「日本の美邸 -Japan Quality-」。こちらの媒体では、器に限らず工芸全般、その折々で紹介してみたいと思った造形について綴ることにしています。 今回は、公開…

きりんさん

年末のおたのしみ、漆作家・村上修一さんの個展がはじまっています。青年海外協力隊の隊員としてタンザニアに赴任していたことがある村上さんは、作家キャリアの初期から、アフリカの大地で見たキリンの姿を描いた漆絵作品を制作していましたが、今展でもそ…

静かに生きる

ずーっと前から、関西方面を旅する時に携行しているのが「Meets」(京阪神エルマガジン社)という町歩きガイドのシリーズ。 そして、こちらの別冊となる「ふだん遣いの神楽坂」という本が、9/18に刊行されました。 タイトルそのままの内容で、気取りはないけ…

夏の終り

この暑さの中で旅をするのは若干躊躇われましたが、今週は北陸出張を敢行。 先週くらいまではすごい熱波に襲われていた北陸地方ですが、金沢についたら東京よりちょっと涼しく、いい感じの出張日和。 まずは九谷の川合孝知さんのところに寄り、そのあと福井…

上品な青

呉須絵具を使った青い絵付けの器・染付。陶芸の長い歴史の中、この技法は、400年近くも日本の磁器絵付けの王座を守り続けてきました。 この期間、日本人の食生活はかなり変わったはずですが、それでも変わらずに食卓で愛され続けるということは、染付が醸す…

はじめてのガラス

お店では、基本的に、ずっと継続して制作をお願いしている作り手が多いのですが、ときには新たな取り組みも必要。 年に数名は、新たな作り手とのお付き合いをはじめています。うちのお店って、神楽坂という立地(いわゆる観光地ってやつですか)にも関わらず…

動物と工藝

日本の器の世界では、長寿を意味する鶴と亀など、加飾に動物のモチーフを用いることが多いような気がします。コハルアンでは、そんな日本ならではの美的感覚を意識して、今月の下旬から「動物と工藝」という展示をおこなう予定。 「動物の姿を器(および工藝…

湯呑のこと

二か月ほど前から執筆を担当しはじめた、WEBサイト「日本の美邸 Japan Quality」の輪番コラム。 毎回、日本の工芸作品をひとつ取り上げ、そのデザインについて書き綴っています。最新の記事では、「湯呑」について書きました。マグに押されて、湯呑が食卓で…

中嶋窯の深皿

先日の秋田出張では、はじめてのお付き合いとなる中嶋窯・中嶋健一さんを訪問。中嶋さんの器については、昨年、はじめて見たときにデジャヴ的な懐かしい感覚があり、「何だろう、この感覚は?」と不思議に思っていました。そのあと、いろいろとやりとりがあ…

思えば遠くへ来たもんだ

定休日を利用して、秋田を旅してきました。秋田は、一度だけ角館を訪ねたことがあるけれど(←武家屋敷見学ね)、出張で行くのははじめて。 昨年の下半期は、うちの店を訪ねてきてくれた渡邊葵さん(角館・白岩焼和兵衛窯)の作品を扱い始め、さらには、これ…

秩父の織物

関東には、銘仙と呼ばれる織物があり、その産地のひとつが埼玉県秩父市。 「秩父銘仙」という名前、着物好きの方であればご存じのことと思います。僕は着物や織物についてはまったくの素人。 絵柄の入った反物については、「先に染めた糸で反物を織るか(←絣…

日本の美邸

現在『コハル・ノート』という連載コラムを持っているサイト「チルチンびと広場」。 こちらには、「日本の美邸 Japan Quality」という別冊的姉妹サイトがあります。実際にご覧いただくとわかるのですが、各コンテンツとも日本語のテキストに付随して英訳を掲…

耳を傾ける

深みを湛えるよきたたずまいのムクロジの器。 いま展示しているコウノストモヤさんの木工作品たちの中で、唯一、木の割れをそのまま生かしているのが、このプレートです。 考えてみれば、我々人間だって、ひとりひとり顔も違えば考え方も違うもの。 きれいな…

参考館まで

同じ仕事を長く続けていると、こなれてくる部分もあるけれど、溜め込んだ情報や知識が頭の中でこんがらかってしまうことも多々あります。 スーパークレバーな人であれば、そういうことはまったくないのでしょうが、僕はただの凡人。始終こんがらかりっぱなし…

いい意味で

日本語って、うつろいやすい言語ですよね。 どうにかすると、言葉が持っているニュアンス自体、時代とともにがらっと変わってしまうこともあります。僕の中では、その代表格が「ヤバい」。20世紀には「ヤバい」と言えば、悪い意味合いで使っていたものだけれ…

九谷の香炉

九谷焼の作り手・川合孝知さんとはけっこう長いお付き合い。 これまで食器を中心に作ってもらってきたのですが、川合さんの筆致で描かれた色絵の香炉がほしいなーと思い続けていて、ようやくその願いが叶いました。絵柄は山水画をアレンジしたもので、ぐるり…

陶山神社

日本の磁器発祥の地と言われる有田は、百貨店に勤めていた時代(←大昔ね)からちょくちょくお邪魔している町。 ただ、これまでの出張ではスケジュールを盛りすぎて、窯元や作家の工房を廻ってへとへとになって帰ってくるだけでした。 そんなわけで、有田では…

三国にて

北陸を旅したのは、9月のこと。福井では、陶芸家・タナカマナブさんが工房を構える三国湊を訪問。 風情のある港町には、北前船が日本の物流の花形であった頃の痕跡が方々に残っていて、タナカさんがあちこち案内してくれました。そのひとつが旧森田銀行本店…

漆の森へ

今年も残すところ10日あまりになりましたが、心が急いてしまうだけで、すべてがカラカラ空回り。 振り返れば、ブログの更新がかなり滞ってしまっていたので、心を落ち着けるためにも、今日から、書き忘れていた今年後半の諸々を備忘録として残していこうと思…

銀色の花

陶芸、七宝、彫金 ――。ここ数年、明治の超絶技巧が注目されているけれど、これらのジャンルの中でも彫金というのは、独特な立ち位置にあると思います。 もともと刀剣の鍔など武家社会に因って立つ体制側の工藝として存在しながら、幕府瓦解の後、ヨーロッパ…

白と黒と

産休などもあり、取り扱いをお休みしていた川島いずみさんに、久しぶりに飯碗を作ってもらいました。東洋の古陶磁への憧憬が強い作り手で、ここ最近は宋胡録(スンコロク=タイのやきもの)をモチーフにした作品を作っていましたが、川島さんの定番と言えば…

コラム補足

WEBマガジン「チルチンびと広場」に掲載されている僕の連載コラム「コハル・ノート -モノと語る-」が昨日更新されました。小石原焼についてのおはなしの三回目。 福岡県東峰村にある小石原地区は、昨年の九州北部豪雨で大変な被害があった地域。損害を被っ…

足を運ぶ

超インドアな業務ばかりだと思われているであろう「器屋」というお仕事。器を並べ、決まった時間にお店を開け、決まった時間に閉める。そういう毎日のルーティンに関しては確かにインドアで成されているわけです。 特に僕の場合、デザインワークなどを含めた…

二回目のコラム

WEBマガジン「チルチンびと広場」で始まったコラム「コハル・ノート -モノと語る-」。その連載二回目が、先日公開されました。モノづくりを通して、各地に息づく文化などを僕の目を通して書き進める月イチ連載のコラムで、だいたい三ヶ月かけて、ひとつの…

スロースターター

僕は、物事に慣れるまですごーく時間がかかるほう。 器の販売に携わるようになってかなり経つのに、いまだに素人風情が抜け切れていないし。オツムが悪いわけじゃないと思うけれど、ぶきっちょなのは確かです。自覚あり。そんな僕ですが、新たにウェブマガジ…

木の工房

やきもの以外の工房へ出かけてゆくことは稀な僕ですが、先月は笠間在住の木工作家・コウノストモヤさんの工房を訪問。 大きな家具を制作することも多いため、広々とした空間で、清々しい木の香りに満ちていました。この日は、これから作ってもらう予定の器の…