銀色の花
陶芸、七宝、彫金 ――。
ここ数年、明治の超絶技巧が注目されているけれど、これらのジャンルの中でも彫金というのは、独特な立ち位置にあると思います。
もともと刀剣の鍔など武家社会に因って立つ体制側の工藝として存在しながら、幕府瓦解の後、ヨーロッパ向けのジャポニズムな工藝として見事なメタモルフォーゼを果たしたわけですから。
明治時代には加納夏雄翁のような名工がいましたが、そんな彫金の爛熟期も、今は昔。
今もそういう流れを汲むベテランの彫金師の方はいらっしゃるのですが、業界自体の高齢化が進んでいることもあり、新作を作ることは減り、過去の名作を修復するので手一杯だと聞いています。
ここ10年程懇意にしているジュエリーアーティスト・坂有利子さんは、そんなベテランの方々の薫陶を受けた作り手。
宝石をあしらったり、七宝技法を使ったり、様々な技法を使った作品を制作していますが、やはりその根っこの部分にあるのは伝統彫金の世界なのではないかと思います。
画像の金具は、型を使わずに打ち出しによって作られたもの。自然や花を愛する坂さんらしい感性が、繊細な技巧によって体現されています。
この金具は裏を加工して、帯留にしたり、ブローチにしたり、それを欲する方の用途にカスタマイズできる仕様。
さて、誰のもとに行くのでしょう?
コハルアン オフィシャルページ https://www.room-j.jp
坂有利子彫金展 十 12/7-16 https://www.room-j.jp/gallery/2018/11/127-1.php