三国にて
北陸を旅したのは、9月のこと。
福井では、陶芸家・タナカマナブさんが工房を構える三国湊を訪問。
風情のある港町には、北前船が日本の物流の花形であった頃の痕跡が方々に残っていて、タナカさんがあちこち案内してくれました。
そのひとつが旧森田銀行本店。
江戸時代に廻船業によって富を得た森田家が設立し、大正期に完成した建物は、福井県下に残る最古の鉄筋コンクリート建築なのだそう。外壁は渋い色のタイル貼りで、内部には手の込んだ漆喰装飾が。また、各部屋は磨きこまれた重厚な調度品で満たされていて、すべてが素敵。
かつての栄華の跡というのは、『つわものどもが夢のあと』というかなんというか、甘美な感傷を喚起するものですね。
人が暮らす場所・町は、生き物のようなもの。
いま見えているものがそのまま永遠に続くものだという思い込みは、現代人の傲慢なのかもしれません。
夕刻、三国湊を去るとき、そんな思いが頭をもたげてきました。
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